finalはソニーやオンキヨーなど、国内のナショナルメーカーではないだけに "知る人ぞ知る" 存在になっているメーカー。
設立自体も2007年と新しく、設立からやっと10年を超えたばかりです。しかし、イヤホン・ヘッドホンブランドとして、オーディオ好きにはすっかり認知されており、高音質で名の知られているメーカーでもあります。
そんなfinalが新しく展開しているダイナミック型のイヤホンが「Eシリーズ」です。
エントリー機からハイエンド機までラインナップしたEシリーズの魅力と選び方について紹介していきます。
final イヤホン Eシリーズの成り立ちと魅力
Eシリーズが登場するまで、finalのダイナミック型イヤホンには「Adagio」シリーズと「Piano Forte」シリーズの2ラインがラインナップされていました。
Adagioシリーズはダイナミック型のエントリーモデルとして位置づけられており、価格帯も数千円台という手ごろなものになっています。
Piano Forteシリーズはダイナミック型ではありますが独自の設計がなされており、価格帯も10万円を超えるハイエンド機という位置づけです。
final Eシリーズ
EシリーズはAdagioシリーズのエントリーモデルからPiano Forteシリーズがフォローしていないミドルレンジのラインナップを埋めるべく登場した機種と言えます。
現在、Adagioシリーズは廉価モデルの2機種のみラインナップに残り、Piano Forteシリーズはローエンドにあった1モデルが消滅してハイエンド機だけが販売されている状況で、ダイナミック型の主力は完全にEシリーズに移っています。
Eシリーズは5機種7モデルのラインナップとなっており、主力は数千円台のエントリーモデルです。
ダイナミック型ドライバーは全機種共通の6.4㎜ドライバーが採用されていますが、各機種でそれぞれ音色が違うのがfinalの上手いところです。イヤホンの筐体素材の違いや設計の違いなどで、それぞれに異なる味付けをしているわけです。
Eシリーズのコンセプト
Eシリーズのコンセプトは「高音質、シンプルなデザイン、使い勝手の良さ、手が届く価格」のすべてを満たすというもので、選んで使えば間違いないという定番のイヤホンと長く呼び続けられることを目指しています。
大人が長く使い続けることができる道具として、また初めてイヤホンの楽しさに触れようとしている人に向けた製品であることを追求しているのです。
finalこだわりの音響設計
そのために最新の音響工学や心理学を応用し、音響設計を行っています。一般的なイヤホンの場合、高域部分にピークを持たせてある音域を強調する音作りをしています。
この場合、一度聴いてみると鮮やかな音に感じますが、一方でピークを作った前後の帯域がマスキングされてしまい、解像感が下がってしまうという現象が起きます。
Eシリーズではピークを作らず、周波数特性を滑らかなカーブにすることで、マスキングされてしまう帯域をなくし、高い解像感を得ることに成功しています。
イヤーピーススウィングフィット機構を採用
Eシリーズのような小型のカナル型イヤホンの場合、耳にジャストフィットさせるのが難しい場合があります。
それを解決するために、イヤーピースが左右に動くイヤーピーススウィングフィット機構を採用。
これによって、耳道の傾きにもイヤーピースがジャストフィットし、イヤーピースの耳道内での変形を防ぐと同時に、音を鼓膜へダイレクトに伝えることが可能になるので、よりクリアな音を再現することができます。
イヤーピース自体も音導菅に挿す部分と耳に触れる部分で異なるシリコン素材を使っており、快適な装着感と高い遮音性を実現したものを使っています。
6.4㎜の小口径ダイナミックドライバー
Eシリーズ共通で使われている6.4㎜の小口径ダイナミックドライバーユニットですが、Eシリーズが比較的低価格帯での展開をしているにも関わらず、非常に高品質な部品と精度の高い組み立てによって、異例の精密さを誇ります。
使われているケーブルにも配慮されており、歩行時のタッチノイズを極力抑える素材を使用されています。
また、最下位モデルのE1000を除く機種については、さらにタッチノイズを抑えるために専用のイヤーフックが用意され、従来のイヤーフックとは異なる簡単な装着ができるようになっていると同時に、快適でタッチノイズが低い装着感を実現しています。
final イヤホン Eシリーズの選び方
Eシリーズは上でも触れた通り、5機種7モデルがラインナップされています。
上位2機種と下位3機種は筐体デザインが異なっていますが、逆に言うと上位2機種の筐体デザインは同じであり、下位3機種の筐体デザインも共通したものが使われています。
同じドライバーを使っているだけに、筐体のデザイン自体を大きく変えることをせず、内部構造や素材によって差を付けているというわけです。
それでは具体的にEシリーズの各機種を見ていくことにしましょう。
【final】E1000
実売2000円台でも「いい音」を感じさせる初心者向けエントリーモデル
Eシリーズのボトムラインに位置づけられるイヤホンです。と、同時にEシリーズの最新モデルとなり、発売ほやほやの機種です。
上位モデルのE2000やE3000と筐体デザインがよく似ていますが、素材はABS樹脂に変更されています。また、E2000やE3000には筐体後部に低音の再生帯域を延ばすための開口部があり、メッシュで閉じられていますが、E1000ではこの機構が省略されているという違いがあります。
E1000では音場感がさほど広く感じない分、楽器の音をダイレクトに伝える再生音に調整されており、低域から高域までバランス良くクリアな音が楽しめます。
いい音のイヤホンが欲しいけれど、高くて手が出ないという人など、イヤホン初心者が楽しめる1本となっています。
筐体 | ABS |
---|---|
ドライバー | 6.4mmダイナミック型 |
インピーダンス | 16Ω |
感度 | 102db/mW |
ケーブル長・重量 | 1.2m・15g |
ハイレゾ | 対応 |
カラーバリエーション | ブラック、ブルー、レッド |
レビュー記事 | 【レビュー】エントリー機の定番になるだろうカナル型イヤホン「final E1000」 - +ログ |
低音から高音までクリアでバランスの良いサウンド。ライブで生演奏を聴いているような臨場感と音の広がり。
実売2000円台というコスパの良さ
カジュアルにいい音を楽しめる
イヤホンを使い慣れている人も納得する音質
【final】E2000/E2000C/E2000CS
イヤホンのヘビーユーザーが普段使いできるサブ機向けイヤホン
Eシリーズの最初のモデルとして登場したのがこのE2000とE3000の2機種でした。E2000も発売当時は実売4000円台でコスパの高いイヤホンとして話題になりました。
E1000やE3000とは筐体素材が異なり、アルミ削り出しでアルマイト仕上げを施されたものとなっています。また、E1000の項で触れましたが筐体後部には開口部があり、低音の再生帯域を延ばす効果があります。
特定の音域を強調しない代わりに、高域に少しだけ特徴を持たせたことでボーカルをフォーカスして聴くことができます。ポップスやロックはもちろん、EDMなどと相性がいい1本です。
E2000CとE2000CSはスマホで音楽を聴くユーザー向けに、ケーブルの途中にリモコンを装備したモデルになります。
筐体 | アルミ アルマイト仕上げ |
---|---|
ドライバー | 6.4mmダイナミック型 |
インピーダンス | 16Ω |
感度 | 102db/mW |
ケーブル長・重量 | 1.2m・15g |
ハイレゾ | 対応 |
カラーバリエーション | ブラック、シルバー |
切れの良い中高音と躍動感のあるボーカル。目の前で演奏しているかのような臨場感。
実売4000円台ながら本格的な再生音
剛性が高く、質感のいいアルミ筐体
イヤホンを使い慣れている人も納得する音質
【final】E3000/E3000C
低価格でも本格的な音を楽しみたいヘビーユーザー向けイヤホン
E2000と同時発売されたEシリーズの最初のモデルとなります。
筐体デザインはE2000と共通しており、筐体後部の開口部もあります。E2000とは筐体の素材違いで、E2000がアルミ削り出し筐体だったのに対して、E3000はステンレス削り出し筐体になっています。
スペック的にはわずかな違いがあるだけですが、再生音はE2000と明らかに方向性が違うものになっており、低域から高音域まで特定の音域を強調することなく、バランスのいい再生音になっています。加えて解像感が高く、音場も広く感じるのでホールで音楽を聴いているような音の広がりを感じることができます。
打ち込みなどの人工音だけでなく、アコースティックな音源で空気感も楽しめます。
E3000Cはスマホで音楽を聴く人向けに、ケーブルの途中にリモコンを装備したモデルとなっています。
筐体 | ステンレス |
---|---|
ドライバー | 6.4mmダイナミック型 |
インピーダンス | 16Ω |
感度 | 100db/mW |
ケーブル長・重量 | 1.2m・14g |
ハイレゾ | 対応 |
カラーバリエーション | シルバー |
コンサート会場にいるかのような響き。広く奥行きのある空間表現と高い解像度を両立。
実売5000円台のイヤホンとは思えない高音質
剛性が高く、シックな質感のステンレス筐体
音質を追求するイヤホンの最初の1本として最適
【final】E4000
リケーブルにも対応し、イヤホンの楽しさを知るのに最適な1本
E2000/E3000の後に発売されたEシリーズのセカンドラインとも言えるのがE4000とE5000です。
E2000/E3000では1万円を切る価格帯ということもあって、ケーブルは脱着不可になっていましたが、E4000ではMMCXの採用でリケーブルができるようになりました。また、筐体デザインも変更され、E2000/E3000のような後部の開口部がなくなり、筐体全体が少し長くなっています。
その長くなった部分にアコースティックフィルターやアコースティックチャンバーが搭載され、中高域の特性をコントロールするようになっています。
筐体素材自体はE2000と同じく、アルミ削り出しのアルマイト仕上げです。しかし、再生音はE2000より全音域で明瞭かつシャープなサウンドで、非常に高い解像感を得ています。
筐体 | アルミ アルマイト仕上げ |
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ドライバー | 6.4mmダイナミック型 |
インピーダンス | 15Ω |
感度 | 97db |
コネクタ | MMCX |
ケーブル長・重量 | 1.2m・18g |
ハイレゾ | 対応 |
カラーバリエーション | ブラック |
ボーカルは息づかいを感じられるほどの、ギターはディストーション一粒一粒の音が感じられるほどの、リアリティのあるサウンド。
MMCX対応でリケーブルできることで音色の変化を楽しめる
全音域でクリアかつ高解像度な音
イヤホン中級者へステップアップするのに最適な1本
【final】E5000
OFCシルバーコートケーブルを採用し、音にこだわった中級者向けイヤホン
E2000/E3000の後にE4000と同時発売されたのがE5000です。
E2000/E3000の関係とよく似ており、E4000とE5000は筐体デザインが共通になっているほか、MMCX対応でリケーブル対応になった点も同じです。ですが、E4000とE5000は仕様が異なっており、E5000ではBA式の上級モデルとなるF7200と同様のOFCシルバーコートケーブルを採用しています。
これによって、信号の伝送速度が飛躍的に向上し、音場に広がりを与えることに成功しています。筐体はE3000と同じステンレスですが、こちらは鏡面仕上げをほどこされています。
再生音は高い解像感のある音というだけでなく、E3000よりさらにクリアで音場感が広く、滑らかな音を楽しめます。
筐体 | ステンレス 鏡面仕上げ |
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ドライバー | 6.4mmダイナミック型 |
インピーダンス | 14Ω |
感度 | 93db |
コネクタ | MMCX |
ケーブル長・重量 | 1.2m・24g |
ハイレゾ | 対応 |
カラーバリエーション | ブラック |
オーケストラのハーモニーを肌で感じているかのような、なめらかな音楽に包まれる没入感のあるサウンド。
MMCX対応でリケーブルできることで音色の変化を楽しめる
上級機と同じシルバーコートケーブルを採用
イヤホン中級者が音楽を楽しめる1本
まとめ
ここまでfinalの新しいダイナミック型イヤホンであるEシリーズの魅力や選び方について見てきましたがいかがでしたでしょうか。
finalというとBA(バランスドアーマチュア)型イヤホンのイメージが強く、多くの機種がラインナップされていますが、そのイメージを払拭できる完成度を持つイヤホンシリーズだと言えます。
イヤホン初心者が無理せず購入できる価格帯から中級者がターゲットする価格帯まで幅広く用意されているので、いろいろ選べるのも魅力です。
そして、どの機種も値段以上のクオリティがあると言えるイヤホンになっています。
迷うならエントリー機のE1000から聴いてみて、finalサウンドを楽しむのも良いでしょう。